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検察こぼれ話⑧ ~異動~

2021.03.26ブログ

2021年3月26日   
弁護士 金 子 達 也   

 

1 毎年1月中旬に,全国の検事がそわそわと落ち着かず,仕事が手に付かない日があります。
 4月に定期異動(転勤)する予定の検事に対する「意向打診」の日だからです。
 この意向打診の日は,あらかじめ発表されるものではありません。
 しかし,意向打診の前日には,人事の事務を担当する検察事務官から,対象となる検事に対し,翌日のスケジュールが尋ねられたりするので,なんとなく察しがついてしまうのです。
 そのため,検事が勤務するフロア(検事の個室が並んでいるので昔は「長屋」などとも呼ばれていました。)では,いよいよ意向打診か?といった噂が飛び交い,その日は,皆がそわそわして落ち着かない雰囲気になるわけです。

2 若手及び中堅の検事は,だいたい2年おきの定期異動(4月1日付けの異動)で,日本全国(時には外国)への異動を繰り返します。
 もちろん,検事にとっては,次の異動先がどこかが,とても気になるものです。
 風光明媚な地検に異動してその土地を思う存分楽しみたいと考える検事(私はこのタイプでした)にとっては,「次こそは沖縄に行きたい!」という希望がかなえて貰えるかが気になりました。
 一方,東京地検特捜部でバリバリ仕事をしたいと考える検事にとっても,その希望がかなえて貰えるかどうかが,とても気になることでした。

3 検事の異動に関しては,一応,希望が聞かれます。
 しかし,20数年間にわたる検事生活をした筆者の経験でも,その希望がかなえられたことは一度もありませんでした。
 筆者は,新任検事(検事1年生)の時代を横浜地検で過ごし,多忙を極め(仕事の能率が悪かったせいです。),検事をやめたいと思ったことが何度もありました。
 ですから,横浜地検での一年をなんとか乗り切った筆者は,新任開け(検事2年生)は離島で釣り三昧の生活をしたいと思い,異動先として,離島の多い長崎地検を希望していたのです。
 ところが意向打診で告げられた異動先は,長野地検でした。
 上司の言い分によれば,「同じ『長』だから問題はないだろう?」とのことでした。
 逆らうことなどできませんでした。
 もっとも,実際に赴任した長野地検は,山が綺麗で温泉も豊富だったのでとても気に入り,冬はスキー三昧であったことは言うまでもありません。

4 検事としての一番の大仕事は「異動先を好きになることである」。
 これまで筆者は,そんな風に考えて検事の仕事をしてきました。
 実際,これまでに横浜,長野,東京,千葉,相模原(神奈川県),小倉(福岡県),大分,千葉,名古屋,東京,宇都宮,福岡と,検事になってから11回の異動を繰り返してきましたが,どの土地も「住めば都」であり,今でもとても気に入っています。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★