イギリス便り⑫~LLM module① Advocacy: Trial Stories~
2020.12.07ブログ
今回は、LLM (Criminal Litigation) のモジュールの1つである、Advocacy: Trial Storiesの概要についてご紹介したいと思います。
このモジュールでは、刑事事件の法廷弁護活動におけるストーリーの重要性、ストーリーが事実認定者に与える影響などについて学んでいます。ストーリーの重要性は、日本の刑事弁護実務においても認識されていますが、日本では学術的な蓄積が少ない分野です。このモジュールでは、ストーリーテリングの意義について、陪審の持つ偏見への配慮、法曹倫理との関係、レトリックの使い方等、多角的な視点からの議論が提起され、興味深い内容になっています。
中でも、ストーリーが陪審の事実認定にあたえる心理学的な影響については、法曹による実務経験に基づく論稿だけでなく、統計的手法に基づく調査結果や神経科学の理論に基づく研究結果など、様々な手法に基づく議論の蓄積があり、日本での刑事弁護実務においても示唆に富む内容になっています。
弁護士 中井淳一