イギリス刑法判例紹介⑤Campbell <未遂犯>
2020.09.21ブログ
【事案】
模造の拳銃等を所持していた被告人が、郵便局の入り口数ヤード手前で警察に逮捕された。被告人は、元々強盗を計画していたと認めたものの、逮捕されたときには考えを変えて自分のバイクに戻るところだったと主張した。
【判断】
陪審は、被告人に強盗未遂罪の成立を認めたが、Court of Appealはその判断を覆し、被告人の行為が単なる犯罪の準備以上に至っていたと陪審が認めるべき証拠は存在しないとした。
【コメント】
未遂犯における実行の着手時期は、日本法においても著名な論点の一つですが、イギリス法でも重要な論点の一つと考えられています。立法により、裁判官は、未遂犯の成否を問うに足りる証拠が存在する場合に、陪審に判断を求めることとされています。未遂罪の成否の判断基準についても、「単なる準備以上」の行為が要求されることが立法により定められていますが、個別のケースがこの基準に当てはまるかという点は、陪審により判断されることになります。
弁護士 中井淳一