イギリス刑法判例紹介④Jogee <共犯>
2020.09.14ブログ
【事案】
被告人は、共犯者が被害者をナイフで刺し殺した現場に居合わせており、共犯者がナイフを持っていることにも気付いていた。被告人自身は、割れた瓶を持って、被害者を脅すような言動をとっていた。
【判断】
本ケース以前、判例は、共犯成立の要件として実行行為に関する予見可能性を要求していた。本ケースでは、被告人が共犯者による被害者の殺害を予見することは十分に可能であったため、Crown Court、Court of Appealでは、被告人は殺人罪(murder)で有罪とされた。しかし、Supreme Courtは判例を変更し、共犯の成立のためには実行行為を助長等する故意が必要とし、本ケースにおいて殺人罪の成立を認めなかった。
【コメント】
本ケースは、共犯の成立範囲に大きな影響を与えた重要判例とされています。本ケースにおける最高裁の判断は2016年になされており、その前後で、特に殺人罪における共犯の成否が大きく変わることとなりました。そのため、本ケース以前の判決により殺人罪の成立が認められたケースについて、判断の見直しを求める支援者の運動も起きています。
弁護士 中井淳一