イギリス便り⑧~Equity & Trust(信託法)~
2020.08.07ブログ
Equity & Trustは、主として信託(Trust)に関わる法分野ですが、日本法における「信託法」とは内容が大きく異なります。
第一に、Equityは、イギリス法における独特の法概念で、元々は、コモン・ローにおける例外を認めない厳格な法適用の問題点を補うために発展してきました。そのため、Equityの適用される事例では、個別の事件における現実的な解決の妥当性が模索されてきました。
第二に、イギリス法における信託(Trust)は、上述のEquityに基づく個別事案の妥当な解決をもたらすためのツールとして用いられてきました。そのため、日本でも一般的な私有財産に関する明示的な合意に基づく信託だけでなく、様々な場面で信託の法概念が活用されています。例として、チャリティー、法人格のない団体への資産譲渡、法律上の形式要件を満たさない資産譲渡、受遺者を遺言中に明記しない遺言などの場面が挙げられます。
このように、イギリス法では、信託の適用される場面が多岐にわたるため、その内容を一言で定義するのは容易ではありません。また、信託に関する基本的な概念が日本法とはまったく異なるため、学習の非常に難しい法分野ともいえます。
弁護士 中井淳一