相次ぐ「SBS」無罪判決(SBS③)
2020年8月17日
弁護士 虫 本 良 和
日本で、SBS理論(仮説)に基づく訴追が増えてきたのは、2010年代に入ってからのことだと言われています。当時、既に、諸外国ではSBS理論の問題点が明らかになっていたにも関わらず、日本では「三徴候」があれば虐待であると断定するかのような鑑定や、それに依拠する逮捕・起訴が繰り返されているというのが現在までの状況であるといえます。もちろん、日本でも、SBS理論の問題点を指摘する医師も存在しますし、我々弁護士も、医師の協力を得て、虐待を疑われた人の弁護活動を行うことも多くあります。
そのような中で、近年、SBS事案における無罪判決が相次いでいます。
2019年10月25日には、大阪高裁が、乳児を揺さぶって死亡させたとして一審で懲役5年6月の実刑判決を受けた祖母に対し、病死であった可能性を指摘して逆転無罪判決を言い渡しました。また、2020年2月6日には、やはり大阪高裁が、乳児を揺さぶって脳に重い障害を負わせたとして一審で有罪判決を受けた母親に対し、逆転無罪判決を言い渡しています。さらに、同年2月7日には、東京地裁立川支部が、娘を揺さぶって死亡させたとして起訴された父親に対し無罪判決を言い渡しています。
日本においても、SBS理論の問題点を検証し、議論を進めていく必要が高いことを、これらの判決が示しているといえるでしょう。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★