イギリス刑法判例紹介③Evans <不作為犯>
2020.08.09ブログ
【事案】
被告人が、異父妹である被害者にヘロインを渡し、被害者が自らヘロインを摂取した。その後、被害者がオーバードーズの症状を見せたが、被告人は自らの責任の発覚を恐れて救急車を呼ぶなどの措置をとらなかった。
【判断】
Crown Courtにおける陪審は、不作為犯の成立を認めて、被告人をmanslaughter で有罪とした。Court of Appeal もその判断を是認した。
【コメント】
イギリスのコモン・ローでは、不作為犯(omission)による犯罪の成立は、特別な事情により作為義務(duty to act)が生じる場合に認められるとされており、日本法に近い法解釈となっています。ただし、上記事案では、被告人と被害者の関係性(異父姉妹)も作為義務発生の考慮要素になっていると考えられていますが、この点には、被害者と無関係のドラッグ・ディーラーよりも高度の義務を課す結果になるのは不当であるとの批判もあるようです。
弁護士 中井淳一
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★