緊急事態宣言中も刑事裁判は行われますか? 刑事裁判が先送りされた場合に保釈は可能ですか?
1 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言中であっても,刑事裁判は行われています。
しかし,感染リスク(人と人との接触)をなるべく避けるべきであるという社会的要請に応じ,裁判所は,緊急事態宣言中は,刑事裁判の期日をできるだけ取り消し,延期するという方針を打ち出しています。
身柄拘束された被告人の刑事裁判の期日が延期されれば,それだけ身柄拘束期間が伸びることになるため,弁護人の立場からは期日延期に直ちには賛同しがたいものの,感染拡大を阻止したいという社会的要請は無視できません。
また,例えば担当する裁判官が体調を崩すなどの事情があれば,期日延期に応じないわけにはいかないでしょう。
ですから,緊急事態宣言中は,予定されていた刑事裁判の期日が延期されることにより,実際に行われる刑事裁判は大幅に減ることが予測されます。
それに伴い,身柄を拘束された状態のままで放置される被告人も増加するという,困った状況になるわけです。
2 このような困った状況から被告人を救い出す手段のひとつが,保釈です。
保釈が認められるかどうかは,起訴された犯罪事実の重大さや証拠隠滅のおそれの度合いなどに大きく左右されるため,緊急事態宣言によって刑事裁判が先送りされたからといって,それだけを理由に保釈が認められることはあまり多くありません。
とは言え,刑訴法90条は,「裁判所は,保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか,身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上,経済上,社会生活上又は防御上の不利益の程度その他の事情を考慮し,適当と認めるときは,職権で保釈を許すことができる。」と定めています。
そして,新型ウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言という,被告人には全く責任がない事情によって身柄拘束が長期化することは,裁判所が職権で保釈を許すために考慮すべき「事情」の一つと言えます。
したがって,例えば執行猶予判決が予測されるのに緊急事態宣言の影響で判決期日が先送りされたような場合には,保釈が認められる可能性は高いと思われます。
また,期日が開かれれば執行猶予判決が確実に得られるような事件であれば,勾留取消請求を行うことも考えられます。保釈は,許可されたとしても,一定額の金額を裁判所に納付しなければなりませんが,勾留取消請求は,不要な勾留を取消制度であり,お金を用意する必要はありません。
実際に保釈や勾留取消請求が認められるかどうかの見通しは事案ごとに異なりますが,法律事務所シリウスの弁護士は刑事事件に精通しているので,具体的な見通しをお示しできるはずです。是非,ご相談ください。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★