菅野亮弁護士が土地家屋調査士会市川支部で「私道に関する法律問題」について研修をしました
千葉県土地家屋調査士会市川支部で,「私道に関する法律問題」に関する研修をしました。
「私道」は,道路でありながら,私権の行使が認められることから,私権を行使された場合に通行権等を主張する者との間で,法律上の問題が生じます。建築基準法上の道路であっても,いわゆる5号道路や2項道路について,道路の所有者(あるいは,共有者)が,通行を妨害する場合,どのような法的措置が執れるのか問題となります。
過去にもいわゆる2項道路に,土地所有者が塀を築造したケースで,その道路を通行している者から塀の収去請求をしたものの,これが認められなかったケースがあります(最判平成5年11月26日,ただし,塀の築造によって制限される通路部分がブロック2枚分だったという事案の特殊性もあり,この最高裁判決を一般化することはできません。)。
5号道路に簡易ゲートを設置して通行妨害されたケースで,その妨害行為の禁止を認めたケースもあります(最判平成9年12月18日)。このケースでは,「建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は,右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され,又は妨害されるおそれがあるときは,敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り,敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。」と判断しました。
「私道」については,通行の問題だけでなく,家を建てる時や引越時に,私道にある上下水道管の給排水施設等が利用できるかということも問題になることが多く,私道を多数の共有者で管理している場合,給排水施設利用の同意を得ることも容易ではありません。この点,水道については,他人の土地であっても,「宅地の所有者は,他の土地を経由しなければ,水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け,その下水を公流,下水道まで排出することができない場合において,他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは,その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り,当該給排水設備を使用することができる」とする最高裁の判断があり(最判平成14年10月15日),最終的には法的手続により解決することになります。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★