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相続法改正(2)~遺留分の改正~

2019.05.14ブログ

平成30年7月の相続法の改正により,遺留分に関しいくつかの改正がありました。

1 遺留分侵害額請求権へ~モノからお金へ~
 例えば,AさんがBさんにすべての財産を遺贈するという遺言を残して亡くなった場合に,相続人であるCさんが,Bさんに対し,相続人として,一定の取り分(遺留分)を取り戻すことができます。このように,相続の際,遺言があったとしても認められる相続人の取り分を「遺留分」といいます。
 改正前は,相続人が取り戻す方法としては,遺贈された財産の一部(土地なら土地,有価証券なら有価証券)を取り戻す(土地なら共有持分を取得する)というものでした。
 今回の改正では,物を取り戻すのではなく,遺贈を受けた人に,侵害額相当額の金銭を請求できるようになりました(遺留分侵害額請求権)。
 これにより,請求する側としては,実際には使用できない土地の共有持分などを受領せずに金銭解決が図れること,請求される側としては,遺贈対象の財産を確実に取得できることというメリットが得られました。
 もっとも,請求される側に,金銭の支払余力があるとは限りませんので,裁判所への請求により,支払期限の猶予を受けることもできることになっています。

2 遺留分の算定方法の明確化
 今回の改正では,遺留分の算定方法を法律上明確にしました。
その計算方法は以下のとおりです。

①個々の相続人の遺留分額=(遺留分算定のもととなる財産総額÷2(※))を法定相続割合で割った分
   ※ 直系尊属のみが相続人の場合は,遺留分算定のもととなる総額÷3
②遺留分算定のもととなる財産総額
 =相続開始時の財産総額+生前贈与した財産(※1,※2)-債務の全額
 ※1 原則として相続開始前の1年間にしたものに限ります。
 ※2 相続人に対する贈与は,原則として相続開始前の10年間にした財産のうち,婚姻・養子縁組のため,又は生計の資本として受けたものに限ります。
③請求できる遺留分侵害額=個々の相続人の遺留分額-遺留分権利者が受けた遺贈・生前贈与を受けた財産(※)の額-遺留分権利者が相続により取得する額+遺留分権利者が承継する債務の額
      ※ 生前贈与を受けた財産の種類は②の※1※2と同じ

3 遺留分算定の際に考慮される特別受益の限定
 相続人に対する贈与については,原則として相続開始前の10年間にした財産のうち,婚姻・養子縁組のため,又は生計の資本として受けたものに限ることになりました。「婚姻・養子縁組のため又は生計の資本として受けた財産」は,従来,遺留分の算定に際し,特別受益として期間制限なく考慮されていましたが,これを原則として10年間に限ることにしました。

4 施行日について
 以上の改正は,平成31年7月1日から施行されます。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★