民法改正シリーズ ~詐害行為取消権~
債務者が,自己の財産を減少させる行為をした場合に,債権者がその行為を取り消すことができる権利として,詐害行為取消権があります。
詐害行為取消権について,民法改正により,規律が変わることになりました。
これまで民法は,詐害行為取消権について,一般的な規定をするに止めていましたが,民法改正により,相当の対価を得て財産を処分した場合,特定の債権者に財産を処分した場合等,行為を類型化した規定が新設されることになりました。
債務者が破産した場合の破産法上の否認権の規定と,詐害行為取消権に関するこれまでの判例等にならって整理されたものです。
債権者は,詐害行為取消権を行使して金銭や動産を取り戻すときには,債権者に直接その支払または引渡をするよう求めることができるということも,改正民法に規定されます(改正法424条の9)。
詐害行為取消の効果は,これまで「相対的取消」と言って,債権者と,詐害行為取消訴訟の被告となった受益者(債務者から財産を取得した者)又は転得者(受益者から財産の移転を受けた者)との間でのみ取り消されるものと考えられてきましたが,民法改正によって,債務者及び全ての債権者に対しても効果が及ぶとされます(改正法425条)。
そのため,債務者は受益者等に対して,自己に財産を返還するよう求めることもでき,これによって,債権者が受益者等に対して財産の返還を求める権利も消滅すると考えられていますので,債権者は詐害行為取消訴訟をする前に,財産を保全しておかなければ,せっかく詐害行為取消が認められても,回収につながらなくなる可能性があることに注意が必要です。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★