民法改正と交通事故実務への影響 ~③消滅時効期間~
2017.10.30ブログ
平成29年6月2日,『民法の一部を改正する法律』が公布され,民法のうち債権関係の規定が大きく改正されることになりました。
大きなポイントの1つが,消滅時効期間の伸張です。
改正前の民法では,交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は,3年間とされていました。原則として,物損事故であれば事故日から3年間,人身事故であれば症状固定日から3年間で,請求権が消滅時効にかかることになります。
この期間が,改正後の民法では,5年とされています(改正後の民法166条1項1号)。したがって,損害賠償請求をする側から見れば,請求の準備などのために使える期間が延びたことになります。
ただし,注意をしなければならないのは,民法改正により消滅時効期間が5年に延びたのは,民法上の不法行為に基づく損害賠償請求権に限られるということです。
交通事故の損害賠償請求では,自賠責保険の被害者請求や,人身傷害保険への請求などを行うこともありますが,これらの請求権の時効期間は3年間で,民法が改正されても変更されません。
事故から長期間が経過しているような場合には,請求内容に応じて,消滅時効にならないか注意をする必要があります。
弁護士 中井淳一