民法改正と交通事故実務への影響 ~①逸失利益~
2017.10.15ブログ
平成29年6月2日,『民法の一部を改正する法律』が公布され,民法のうち債権関係の規定が大きく改正されることになりました。
これにより,交通事故における損害賠償の分野でも,様々な影響が生じます。
賠償額との関係では,法定利率の引き下げによる逸失利益の増加が,大きなポイントとなります。
今般の民法改正により,これまでは年5%とされていた民事法定利率が,年3%に引き下げられます(改正後の民法404条2項)。なお,この利率は,今後3年ごとに変動することになります。
民事法定利率の引き下げにより,逸失利益の算定において,中間利息控除額の根拠となる利率も引き下げられるため,結果として,算定される逸失利益の額が増加すると見込まれます。
簡単にいえば,逸失利益というのは,交通事故で後遺障害が残った場合に,将来の収入減少額を見込んだ損害です。その算定に当たっては,将来得るべきお金を,現時点受け取ることになるため,利息分が差し引かれる(中間利息控除)ことになります。そのため,法定利率が引き下げになることで,得られる逸失利益は増加することになるのです。
今後,交通事故で後遺障害が残り,逸失利益の損害賠償請求をする際には,損害額の算定に当たり,改正後の民法が適用されるのかも検討する必要があります。
弁護士 中井淳一